9.歯周病の重症度(進行度)による分類
昔は、「歯槽膿漏」と言う言葉がテレビのコマーシャルや雑誌等で、使われていました。
しかし、最近では「歯槽膿漏」と言わず、「歯周病」と表現されるようになりました。
では、「歯槽膿漏」=「歯周病」なのでしょうか?・・・・・・
他のホームページや雑誌等で、「歯槽膿漏」= 「歯周病」と同じように説明されている場合が多く見受けられますが、
「歯周病専門医」の立場から厳密に言うと、
同じではありません。
「歯槽膿漏」と同様に、「歯肉炎」と言う言葉も使用されなくなったことにお気付きですか?・・・・・・
昔は、「歯肉炎」と「歯槽膿漏」と分けて表現されていました。
しかし、最近では、それらを総称して「歯周病」と表現されることが多くなったのです。
そのことが、
「歯周病」になったら
「もう治らない。」とか、
「将来、全ての歯を失う怖い病気である。」等と言った、
誤解や混乱に大きく関係していると思われます。
従って、昔の表現の「歯肉炎」・「歯槽膿漏」と「歯周病」を照らし合わせながら、今一度、整理し直し「歯周病の重症(進行)度による分類ならび治療法」をご紹介させて頂きたいと思います。
「歯肉炎」:
歯肉のみが炎症を起こし腫れている状態。
(歯槽骨は、まだ正常で溶けていない。)
まだ、治療により十分元通りに治る見込みがあります。
再発を防止することが、比較的容易である。
「歯槽膿漏」:
「歯肉炎」が進行し、歯槽骨が溶けて(吸収)しまっている状態。
末期の歯周病になり抜歯とならないよう、これ以上に歯槽骨が溶けてしまうのを抑えることが治療目的となります。
油断すると容易に再発し進行するため、治療終了後もプロによる定期的な管理が必要となります。
「歯周病」:
初期の歯周病は、「歯肉炎」のことであり、
中等度から重度の歯周病は、「歯槽膿漏」のことです。
<歯周病の分類>
自覚症状:
自覚症状が全くない場合が多い。
たまに歯磨きの際、出血する程度
歯も動揺せず、硬いものでもなんでも食べることができる。
臨床症状:
歯肉の発赤・腫れ
検査結果:
①歯周ポケットの深さ:2~3㎜程度
②検査時の出血:場合により有る
③歯の動揺度:ない
④レントゲン所見:歯槽骨の吸収は、ほとんどない
自覚症状:
歯磨きの際、出血する頻度が増える。
硬いものなど噛みごたえのあるものを食べると、歯が動揺し異和感や痛みを感じる。
歯周病独特の口臭がする場合が多い。
(口臭は自分では臭いに慣れてしまい感じず、他人に言われて初めて気づく場合が多い)
臨床症状:
歯肉の発赤・腫れ
歯の動揺
口臭
検査結果:
①歯周ポケットの深さ:3~5㎜程度
②検査時の出血:高頻度である。
③歯の動揺度:水平的な動揺がある。
④レントゲン所見:歯槽骨の吸収ならび、歯根膜腔隙の拡大がある。
自覚症状:
歯茎が腫れて、痛くてハブラシが当てられない。
排膿(膿が出る)や自然出血する頻度が増える。
普通の硬さの食べ物も、噛むと痛くて食べることが出来ない。
歯が動揺し異和感や痛みを感じる。
自分でも、歯が動く(動揺する)ことが分かる。
ほぼ全ての場合に、歯周病独特の口臭がする。
臨床症状:
歯肉の発赤・腫れが強い
歯の動揺が大きい(グラグラ)
口臭が強い
検査結果:
①歯周ポケットの深さ:5㎜以上
②検査時の出血:高頻度である。
③歯の動揺度:水平的な動揺のみならず、垂直的に歯が沈み込む。
④レントゲン所見:根尖に及ぶ過大な歯槽骨の吸収ならび、歯根膜腔隙の拡大が顕著である。