2.虫歯(う蝕)の発生メカニズム
1)虫歯菌(ミュータンス菌)の付着
歯の表面は、エナメル質を作っているハイドロキシアパタイトに結合する唾液中の特定のタンパク質で作られた①ペリクル①ペリクルというタンパク質の膜で覆われています。
このペリクルのタンパク質を好むいくつかの唾液中の常在細菌が、ペリクルを介し歯の表面に付着してコロニー(菌の集合体)をつくり始めます。
その菌の集合体の中に、虫歯になる原因菌である②ミュータンス菌(虫歯菌)も含まれているのです。
2)プラークの形成
②ミュータンス菌(虫歯菌)は、食事やおやつ等に含まれる③砂糖をグルカンに転換しながら、④グリコカリックス(粘着性多糖体)を合成します。
②虫歯菌(ミュータンス菌)は、ねばねばした④グリコカリックス(粘着性多糖体)により互いに引っ付き合いながら、他の菌(歯周病の菌も含む)も引き付け細菌の集落である、⑤プラークを形成します。
⑤プラークはネバネバしており、歯磨き以外取り去ることは出来ません。
(うがいやガム等で取り去ることは出来ません。)
3)バイオフィルムの形成(プラークの成熟)
歯磨きを長時間行わなかったり、磨き残しがあると、プラークが成熟しヌメヌメのスライム状の⑥バイオフィルムが形成されます。
また、虫歯菌(ミュータンス菌)は砂糖を栄養にしながら、排出物として⑦酸を放出します。
⑥「バイオフィルム」は、
1)歯磨きで取り去ることは困難となります。
2)殺菌薬・消毒薬が、中にしみ込まず効きません。
(うがい薬や飲み薬が効かない。)
従って、
歯科医院での専門的機械清掃(P・M・T・C)が必要となります。
4)脱灰と再石灰化
「脱灰」:
虫歯菌(ミュータンス菌)が⑦酸を放出し、歯の表面(エナメル質)が溶かされて、歯のカルシウム(Ca)やリン(P)などのミネラル成分が溶け出し(脱灰)始めます。
「再石灰化」:
歯の表面から溶けだしたカルシウム(Ca)やリン(P)などのミネラル成分が飽和状態になると、唾液中のフッ素(F)の力を借りて、再び溶け出したミネラル成分が歯の中に取り込まれ、歯の表面が再生(再石灰化)されます。
このように「再石灰化」において、フッ素(F)は大切な役割を果たしており、「フッ素入り歯みがき粉」や「歯科医院でのフッ素塗布」が、虫歯予防に有効であることが分かります。
5)虫歯(齲蝕)の発生
日頃、食べ物を食べたり飲んだりする度に歯の表面では、「脱灰」と「再石灰化」が繰り返されています。
しかし、
① 脱灰の頻度が多い場合:
・甘いものをよく食べる(甘嗜好)
・間食が多い 等
② 脱灰の時間が長く続く場合:
・だらだら食い
・食後すぐに歯磨きをしない
・毎食後・就寝前に歯磨きをしない 等では、
「再石灰化」が十分起こらず、「脱灰」が進行し、歯の表面が溶け続けてしまい、虫歯(齲蝕)に移行してしまいます。